日本としがらみ~政治編~

前回はある大手企業のお話をしましたが、同じ話を国全体のレベルでもしなくちゃいけないと思います。「しがらみ」のお話です。

いま、法人税を下げなくちゃいけないという議論があって、でも実行できないんですね。最終的にそれをやらなくちゃいけない、ってことはみんなわかってるはずです。でもそれを今やれるか、という段になって微妙になっちゃう。その認識はあるし、仕組みも計算・試算も全部揃ってるんですけど、微妙!そういうのを見て外人が日本株を売ったりしてますね。

日本では法人税の税収に占める比率が極めて低いんです。だから法人税というのは頼りにならないんですね。それに景気が悪いと企業も儲からないから税収も減っちゃう。逆にいい時には税金をいっぱい取ることになるんで、企業が成長できなくなります。そしてグローバルな競争力が落ちていきます。

そんな法人税の税率をなぜ下げられないのか、というと、「かわりに消費税を上げなくちゃいけない」からです。しかも大幅に!消費税の増税はもともと自民党じゃなくて民主党でやったんですけど、「税金を上げるんだけど、この税金はあなた達のために使いますよ」って言ったんですね。つまり「目的税」にすると約束しちゃったんです。そうすると他のことに使えないから、財務省が「お金ないよ」って!それで今度は「法人税下げちゃダメだ!」ということになって話がまとまらないんです。

でも、そうすると成長できない、ってことになります。このことは、多分海外の市場参加者はみんなわかってるんですよ。そもそも消費税を目的税化することがおかしいんで、少なくとも使途を緩くして、法人税を下げるべきなんです。じゃないと日本企業がアジアで競争に負けちゃうんですよ。

じゃあどうなるの?というと日本の企業が逃げるんですよ。海外で子会社を作って、海外で得た利益を日本に持ってこないんです。持ってこれないんです。持ってくると日本の税金がかかるから。そうすると配当も増えない。面白いことに海外子会社がたくさんのお金を持ってるんですよ。

これ全部法人税の話にかかるんです。いずれやらなくちゃならない、ってことはみんなわかってます。仕組みも全部あります、でもやってない。多分今回やらなければまた3年5年かかると思います。その3年5年の間に競争力が下がるでしょう。これって前回の某企業の話と同じ構図ですよね。

日本としがらみ~企業編~

先日ある大企業の幹部の方のお話を聞かせてもらったんですよ。中期計画の利益率目標を5%に設定しているとのことでした。さすが大企業だけあって、いろんな仕組みとかの話をきっちりされてて、「ああ、細かいことまでよく努力しているなあ」って思ったんですけど、でも利益率は5%、しかもそれは3カ年計画のゴール。

ちなみにこの会社と同業のベスト企業2社は利益率が倍くらいなんですよね。アメリカの大手だともっと、はるかに高い。その会社の幹部の方は、「利益率が低いのはわかってます、認めます。」っていう態度でしたけど、結局それ以上のコメントはありませんでした。

日本が直面しているジレンマ、アベノミクスもそうなんですけど、「やらなくちゃいけないこと」っていうのがあると思うんですよね。

アメリカの有力企業の利益率がなんで高いのか、というと「儲からないことを切る」からなんですよ。「いらなくなったもの」つまり自社でやってる事業のうち、利益率が低いものを競合相手に売っちゃう!人も含めて!それで、利益率の高い事業は残すんですけど、最終的に、もし全部の事業がうまくいかなければ全部売って会社をやめちゃうんです。

日本の場合、どうしてもこの会社で、この母体でがんばろう!みたいなのがあって、事業を「売ったり買ったり」っていうのがまだ定着してないんですよね。そうすると、どんなに立派な管理体制を作って、いいシステムを入れても、決定打にならないんです。根本的に「悪いものを捨てないか、捨てるのにものすごく時間がかかる」という現状を改めないと、世の中の変化についていけない。

日本企業はまず「しがらみ」を捨てなくちゃいけないと思います。「これは出来ない、これは時間がかかる」なんてのをやめなくちゃ!いろんな意見を全部きいてたら結局コンセンサスを取れずに前に進めないんです。「やらなくちゃいけないこと」をやらないでいると、今はよくても3年後、5年後にまた同じ問題に直面するんで、多分その時に違う経営体制かもしれないですけど、また同じ問題に取り組まなくちゃいけないんですよ。仕組みも全部できてて、ちゃんとやってるのに前に進まない、っていうのはもったいないですよね。

日本とブランディング
~なぜウォシュレットは日本にしかないのか?~

トイレに行くたびに思うんですよ、ウォシュレットを見て。あれがないと僕なんかはもうサルですよ、サル!「一日中クサいお尻で歩かなきゃなんないんですか?」ってそわそわしちゃう。でも、世界中でウォシュレットが普及しているのは日本だけなんですよね。で、ウォシュレットを見るたびに、日本って自分のブランドとかやり方を世界に売りこむのがなんてヘタなんだろう、って思うんです。

海外の人達は、ほとんどウォシュレットの存在を知らないんです。不思議ですよね。でも、僕の外国人の友人は日本でウォシュレットを使ってみて感動して「輸入したい」なんて言ったりしますから、海外でも十分受け入れられる製品だと思います。

ウォシュレット、といいますか日本の素晴らしい製品が海外で認知されない、というのにはいろいろな事情があります。例えばアメリカでは販売チャネル。歴史的に日本の会社ってそもそもグローバル・イコール・アメリカだったんですよね。で、そのアメリカでは、現地のディストリビューターが全部メーカーと繋がっていて、日本のメーカーが入れなかったんです。TOTOとか、全然シェアがないんですよ。だからTOTOじゃなくて、LIXILがアメリカンスタンダードを買収したりしてるんです。

いっぽうヨーロッパの場合は地域性というか、ヨーロッパ人の特性が要因になっています。「出来てないこと」ってどこの国にもあると思うんですけど、日本人の場合は結構問題意識があって、謙遜というか謙虚というか、自分でこれじゃダメダメっていつも言ってるんですよね。でもヨーロッパ人の場合、出来てないことも「出来てる」と思ってるんですよ。いやこれは当たり前だ、と。トイレにしてもヨーロッパの技術ってすごく古いと思うんですけどね。

自動車のトランスミッションでマニュアルとオートマがありますけど、ヨーロッパだけは8割がマニュアルなんですよ。オートマが壊れやすいとか燃費が悪いとか、今じゃ妄想みたいなことが固定概念というか先入観として、いまだにヨーロッパに残ってるんです。だからヨーロッパ車で一見マニュアルのような操作感になってて、実はオートマ、なんていうのがありますよね。これもまた人間の不思議さというか、それぞれの国の、それぞれの地域の違いというのをすごく感じます。

そんなこんなで日本はめちゃくちゃ優れた製品を作ってもそれをまったく輸出できない。で逆に海外で「不思議な日本」として紹介されたりしてるんですよね。「日本のトイレに入ると全部自動でやってくれて、なんか鳥の声までする!」みたいな感じ。

日本の中でアベノミクスとかクールジャパンとか、全部トップダウンで官僚が考えると変になっちゃうんで、もうウォシュレット、とにかく売りましょうよ!と言いたいですね。官民プロジェクトを作って、最初はリターンが低くても!無理やりそういう会社を作っちゃうのはどうでしょう?

無関心なことこそリスク
~グルメ番組見てるだけじゃダメ!~

「一票の格差」の話ってどうなったんでしょう?なんだか中途半端ですよね。こういう流れになるんだろうなあ、と思ってましたけど、見てて疲れますよね。本気さが感じられない!政治がこうだから、今の金融市場でも「経済も同じなんじゃないの?」という反応になってると思いますよ。

政治を動かしてる人たちが年寄りなんですよね。別に年寄りが悪いわけじゃないんですけど、年をとると「変われない」んですよね。守りにはいっちゃう。

参議院選挙でも自民党が完全に「支配者」でしょう。そしてこれは「元通りになった」ということです。新しい党が生まれても人材やマネジメントのプールがない。企業経営の世界でも同様で、社外取締役の制度がなぜ成り立っていないかというと、そもそも社外取締役という経験のある人がいないんです!なぜオーナー社長がずっと消えないのかというと、雇われ社長にプロがいないんです!

今回の民主党もまったく同じ。自民党でうまくいかなかった人たちが集まって、政権をとって、かっこいいステートメントを話すのはいいんだけど、実行力がない。そうすると結局実行力のある人達、つまり自民党に政権が戻る。でもあの人達は年をとってるからすごく保守的で、変わらない。

あとメディアの問題もありますね。政治も含めて、いろんな問題について、80%くらいを笑いながら話す国は日本だけ!全国ニュースとかの真面目な番組だって笑いながら話してますよね。福島の問題もメディアから消えたし、原発の問題ももうどうでもよくなってるように見えてしまいます。

スノーデンの告発事件はアメリカでは大騒ぎになってて、彼の行為のもつ意味とか是非についてCNNなんかでも議論しているんです。これが日本じゃ伝え方が全然違います。「ああ逃げたよね」みたいな、「でもなんか捕まらなきゃね」みたいな…。ホント無関心。グルメ番組でもやってればいいと思ってるんですかね!

でも、今の政治やメディアの問題って、つまるところ国民が無関心であることが原因なんじゃ?って思うんですよ。「変われない政治」と「真面目な論調を伝えられないメディア」、そんな中で国民が笑いながらグルメ番組なんか見てて、それでいいんですか?って思いますね。