月と翻訳

6月に入りまして、東京は梅雨の時期だからか、雨模様の日が多くなってきました。仕事からの帰り道、空を見上げても、曇り空で月の見える日が少なくなっています。ただ、たまに見えた月がきれいだったからと言って、男性がやたらに他人に、月がきれいですね、とは言ってはいけない、という話も頭によぎりました。

それは、典拠不明の一種の伝説、テレビドラマではネタとして使われたこともあるようですが、夏目漱石さんの逸話があるからです。漱石さんが英語教師をしていたころ、教え子に、「I LOVE YOU.」の日本語訳を聞かれて、「日本人なら、月がきれいですね、とでも訳しておけば伝わる」と言ったという話です。現代では、その意味を知らない人に言ってしまうと、何言ってんだろ、この人、と引かれる恐れがありますが、漱石さんの時代には、実際に使われる自然な日本語にするとこうなる、という逸話だったのだろうと思います。

シェアードリサーチには、和文レポートを翻訳するグループ企業がありまして、英語圏の人ができるだけ自然に読めるような翻訳になるように心掛けています。原文に忠実に訳すと、実際にはそういう言い方はしないでしょう、読みにくい、という文章になる恐れがあるので、意味を汲んで自然な言い回しで訳すようにしています。さすがにビジネス上、先の夏目漱石さんの例のような文学的な翻訳にはしていませんが、このように言えば英語圏の人にはわかりやすい、という文章になるよう、作成しています。