タダでMBOを主導するアクティビストに大義はあるのか?

ローランドのMBOですが、大株主であるタイヨウ・パシフィックがマネジメントと一緒になって参加する、という内容です。それ自体はいいのですが、気になるのはMBOの株価のバリュエーションがPBR1倍弱だということです。

ローランドのバランスシートをみると140億円くらいのネットキャッシュがあります。MBOの株価から算出した450億円の時価総額に対して3割強の現金を持っているということです。加えて、ローランドにはローランドディージーという上場子会社(時価総額が650億円)があり、持分は40パーセントです。つまり、更に300億円弱の資産がローランド社にあるということです。合わせると、今回のMBO価格では三木社長とタイヨウがタダで手に入れることになります。基本的には、既存の株主に十分なリターンを与えてMBOするのが普通なんですが、この価格がどうも妥当に見えません。

加えて、ローランドの株価のパフォーマンスを見ると、今回のMBO価格は長期サイクルでの前回のピークである2007年頃と比較しても半分くらいにしかなりません。簡単にみてみると、ローランドのバリュエーションは循環的に、言い換えると経済のサイクルに影響されています。業績が回復するとともに、長期成長がないものの、バリュエーションが上方調整します。例えば、2006年とか2007年に1.2倍から1.3倍のPBRになっています。1999年も同様でした。株価は業績回復やバリュエーション回復を反映し、1999年も2007年も3,000円を超えるレベルになっています。今回の1,875円のMBO価格だと、既存株主は軽くバカにされているような印象を受けざるを得ません

因みに、前回の高値レンジで買った人たちは、今回あの1,875円で応募すれば、大損することになります。

タイヨウさまは自称「Friendly shareholder activist」(友好的株主アクティビスト)です。要するに企業のマネジメントにケンカせずに、助言しながら、株主価値を上げることです。元々「自分たちは投資家にとって良いことをやっている」ということを訴えています。今回はこの価格でこのMBOが成功すれば、日本の株主訴訟やプロクシファイト(議決権行使に関する委任状争奪合戦)が事実上極めてやりにくい法的環境を使って、株主利益を侵害するようになると思います。アクティビストたる投資家が、「そういうことをやっていいのか?」と疑問に思います。

保守的企業の勇気ある方向転換とマナー違反のMBO

先日すごいニュースがありました。アマダという会社が利益の半分を配当に、半分を自社株買いに充てる、つまり利益の全額を株主に還元するというのです。本当にびっくりしました。

アマダはもともとバリュー株に分類されるような会社でした。業績は悪くないが成長性も高くない、という評価がされていて、でも、ものすごくキャッシュを持っている。おそらく5年以上、もしかすると10年くらいにわたって投資家にそのことを指摘され続けているような会社だったんです。

アマダのような、保守的とみられていた企業が突然こんなことをやってしまう、というのは日本の市場にとって長期的には非常にポジティブな話題だと思います。日本の企業は儲かってもお金を投資家、株主に還元してこなかった結果、ROEが低く、成長性も低く、そして株価も低かったんです。アマダが勇気をもって方向転換したのは本当に素晴らしいことです

逆に「えっ」と思うような話題もありました。ローランドのMBOに関してです。創業者は反対のようですけどね。これについてはまた次回のブログでお話しします。