涼しくなりましたね、ようやく秋が来たという感じでしょうか。蒸し暑さの中でスーツを着ることもなくなり、ホッとしているところですが、今回はこの「蒸し暑さの中でスーツを着る」という日本の独特な文化的慣習について感じたことをお話しします。
スーツを着用するという慣習は、日本という国がどう変化してきたか、そして一方ではどれほど変化していないかを表す、わかりやすい例なんですが、意外と見過ごされがちなんです。洋服を着るという風習は、そもそも1870年代に政府主導で導入されました。それ以来、日本の伝統的な衣装は、きちんとした着物からパジャマのように快適な甚平に至るまで、片隅のほうに追いやられたんです。
こうした大きな転換で、皮肉にも、長年の伝統だったものが、全く新しいものに取って代わられました。日本でのビジネススーツというのは、さすがにボリビアの山高帽とは違って年月とともに多少の変化はあるものの、日本のサラリーマンのある種のユニフォームとなりました。国の気候にまるで合っていないことは残念ですが、大体6月から9月くらいまで背広を着て汗ダクになることを、やむを得ない慣習として受け入れてきたんです。
ところが、クールビズ導入で変化が起きたんですね。クールビズはオカミによって熱心に奨励され、国民に広く行きわたって、反対意見が強く出ることもなければ、真剣にその意義が論じられることもなく、導入されたんです。
ペラペラの生地で裏地もない夏物のスーツを購入し、ノーネクタイで白シャツを着て、背広は着たり持ち運んだりする新しいスタイルのクールビズは、2006年に導入されると瞬く間に、ビジネスシーンでの常識的な装いとなったんですね。
クールビズ自体はよいことですし、日本の会社がどういう風に態度を変えてきているか、投資家が理解するのによい材料でもあります。というのも、日本企業の経営陣から投資家がよく聞かされる、よく意味のわからない目標ROE8%、と同じようなものなんです。
次のような対話が、よくあるんじゃないでしょうか。
海外投資家(別名ガイジン):あなたのところのROEは低すぎますよ、6%しかないじゃないですか?
経営陣:存じております。実際、重要な懸案事項だと認識しております。事態を慎重に検討し、業務の見直しを図った結果、我々は、目標ROEを8%に設定し、3年後には達成したいと考えております。
ガイジン:世界を見渡せば、自社株をぜ~んぶ買うくらい、大量に自社株買いをするとこも多くありますし、ROEだってずっと高いですよ。あなたの最大のライバル会社のA社なんか、ROEが18%もありますよ!
経営陣:欧米企業の多くがROEを高くしていることは、私たちだって知ってます。私たちは、そうした状況をきちんと注視していますが、あなたがたにも、文化の違いというものを理解してもらいたいと思ってます。日本では、モノゴトは外国と同じようにはいかないのですよ。それに、日本の上場企業の平均ROEが7.3%であるところ、私たちはその上を目指しているということもわかってください。
ガイジン:しかしですね、業界によって話は違うのですよ!どうして8%に設定するのですか!すべての業界や企業を同じモノサシで測ることはできませんよ!自分のバランスシートをごらんになってください。冬場のフジヤマの雪よりも多く、現金が積みあがっているじゃないですか!
[経営陣の内なる声]:(もういいから、帰れ!)
経営陣(丁重に):貴重なご意見をありがとうございます。私たちは、株主様の利益を改善させるべく、長期的な目標をさらに見直していくよう今後とも努めていきます。
ガイジンとこんな対話をした日本企業も多いのではないでしょうかね。さて、この例がどんな具合にクールビズと似ているというのでしょうか?よく耳にする目標ROE8%というのは、クールビズのようなものなのですが、これについては次回のブログでお話ししますね。