日本政府の為替介入と米国大統領選

今回は、円高についてです。
日銀をはじめ、日本の経済界、政府も120円/ドルが心地よい水準だと思っています。
ある筋から聞いた話ですが、日銀がマイナス金利を発表したときには120円/ドルにいくだろうという想定が強かったようです。

結果、120円/ドルにはなっていませんが、これはドル安に動いているからだというのが一般的な見方です。このドル安ですが、110円/ドルならでも十分に介入したくなる水準。105円/ドルになれば、相当積極的に介入したくなる水準。100円/ドルであれば、まあもう我慢できない、絶対に介入したくなる水準だと思います。

ですから、今の107円/ドル付近だと、麻生大臣をはじめとして介入に対する発言が相次いでいます。

ただここで問題があります。アメリカ大統領選で、民主党のトランプ氏が候補として固まりました。トランプ氏は日本に対しても、仕事とお金を米国から奪っている国だとコメントしています。これは、完全な憶測になりますが、アメリカ政府としては、円安ドル高に向けて日本と協調する動きをとることは、大統領選の空気を読むと、非常に難しい状況なのだろうと思います。

ヒラリー氏がトランプ氏と選挙戦を戦う際、日本が通貨を弱くして、仕事がアメリカから日本に移ることに拍車をかけているのではないか、という議論になる可能性もあります。アメリカは、日本が円高で困っているのはわかっているものの、アメリカとしては、大統領選挙の争点や時期を鑑みると、当面の間、緩やかなドル安が望ましいのでしょう。

この憶測が正しければ、日本は非常に困った状態にあるはずです。アメリカのサポートがなければ、介入しても長続きせず、混乱を引き起こすだけです。105円/ドルで日本政府が介入して、120円/ドルに戻ったとしても、アメリカが円安は困る、という発言をすれば投機的なフローが、円高の方に圧力をかけたりして、介入による円安効果をすぐに押し下げる可能性が強そうです。

安倍さんがヨーロッパに行ってきたのは、もしかして、ヨーロッパを日本サイドに引き込み、ヨーロッパも日本も、世界経済を考えればお互いに通貨安をつくらないといけないよね、と訴えようとしているのではないかなとも思えます。

僕はもともと115円/ドルくらいで、日銀も必死に動こうとすると思っていましたが、今回は日銀が動きませんでした。これは、もしかして政治的な日米関係で、タイミングに無理があると思ったのではないでしょうか。短期的に、政策の限界を感じておとなしくせざるをえないのでしょう。

そうであれば100円/ドル近辺が安定した新レートになり得ます。105円/ドルにも戻らないというようなことになると、日本企業の業績としてはけっこう厳しい話になるでしょう。

去年は112~113円/ドルだったので100円/ドルというのは楽な話ではありません。となると、日本ではデフレ論が再浮上したりして寒い夏になりそうな気がしますね。

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