大塚家具の騒動から親族経営のリスクを考える

今回は親族企業におけるガバナンスについてお話します。

ガバナンスとは何か、ということが大塚家具の騒動で浮き彫りになりました。今回の大塚家具の件には、世代交代中のガバナンスについて考える材料がありますし、類似事例は他にもたくさんあることでしょう。この事例は単純な話ではないし、簡単な答えがあるわけではありません。

もし大塚家具が委員会設置会社であったなら、良いか悪いかは別として、ガバナンスをきかせる仕組みが働いたのではないかと思うのです。これは委員会設置会社に設置される指名委員会には、取締役の選任や解任に関する議案の内容を決定する権限があるからです。この指名委員会がなかったために、簡単に言えば、親子の意見の相違に基づく争いに株主がいきなり直接巻き込まれる、関与せざるを得ない、という事態になりました。

シチュエーションによって例は様々ですが、間違いなく言えるのは、今回の騒動のような事態は株主たちによくない影響を与えるリスクが極めて高いということです。
騒動のリスクが高いと、どちらかと言えば持ちたくないな、と思う要素が発生してしまいます。

日本企業は世代交代の際には株主の立場についても考えなければならないし、親族経営の会社が現状でも十分ガバナンスをきかせた組織になっているかどうかの見直しも必要です。株主も、こうしたリスクを考慮して企業と対話していかなくてはならないのかな、と思います。

ベストプラクティス(模範解答)を考えましょう
~ガバナンスコード/スチュワードシップコード~

今回はガバナンスコードとスチュワードシップコードについての話です。

ちょっと調べてみるとイギリスにもアメリカにも、ベストプラクティスのようなものがあります。つまりスチュワードシップコードなどに対して、投資家にとって何がベストかを示したものがあるのです。ガバナンスコードは、少なくともこれをしなさい、こういうスタンスをとりましょう、というガイドラインなので、具体的に何がいい、何が好ましくて、何が悪いかというのを判断するために、日本にもベストプラクティスがあれば変革のスピードが加速すると思います。

例えばROEについては、伊藤レポートでROE8%の目標を掲げています。金融の専門家ならよくわかることですが、ROE8%というのはあまり意味のある話とは思えません。色々理由付けしていますが議論の余地があります。ガバナンスコードや伊藤レポートのポイントは、どこかで線引きをしないとなかなか具体的に話が進まないのでROE8%を最低ラインとして達成しよう、という点にあります。

最終的には経営者の意欲や株主からのプレッシャーによって、持続成長もROE8%以上も達成可能だと思うので、投資家サイドが様々な例をみてベストプラクティスをつくる必要があるかなと思います。

ガバナンス構成についても、株主価値の観点からすると、どういう仕組みがベストなのか、どういうガバナンスが本当に効果的なのか、がわかるかどうかというのが重要なポイントです。今単純に決まっている日本のガバナンス構成としては、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、委員会設置会社があります。これまでの日本の習慣や会社法等の成り立ちが影響し、これらの仕組みがありますが、最終的には投資家や株主にとってベストな仕組を選択する必要があるでしょう。今回ガバナンスコードが導入されましたが、ガバナンスの改革や変革はまだ第一歩を踏み出したに過ぎませんので、次に必要なステップはベストプラクティスだと思います。これについて自分でももっと考えたいし、皆さんもぜひ考えてみてください。

ピークを越えた後は?

株式市場にもサイクル(循環)があるので、今の相場の勢いを見ると今回のサイクルの頂点がもう見えたような気がします。つまりピークを越えたらどうなるかっていうのを考えなきゃいけない時間が近づいて来ています。

もちろん、短期的にはまず「Sell in May」(5月に売れ)という現象が起きるかどうか気になります。今の元気な相場だとこのまま夏のラリーが訪れて、5月に売った人が馬鹿みたいことにもなり得ます…

関係ない話ですが、先日A社の個人株主から聞いて驚いた話がありました。この方は2001年からA社株をIPOから持っていて、「めちゃくちゃ儲けさせてくれた。すごく良い株だ」とか話していました。ただ、よく聞いてみると、時価総額の概念がわかっていないようでした。株数だけで見ていて、株式分割されると元々2万株例えば持っていたとして、今4万株持っているのが嬉しいと。それで半分売っても、元々持っていた2万株がそのまま残っている、これが嬉しいみたいな感じです。A社の株価を確認したところ、確かに上がっているようですが、IPOから買っていたら14年間かけて倍になっています。興奮するほどのリターンじゃないでしょう。株数が増えることにあんなに喜ぶる人がいるんだなあと思いました。

だから分割で株価が上がるか…と思うと、市場参加者はみんな合理的な行動しているでもないし、場合によって半合理的な行動もとっていません。このため短期的な動きを占うにはかなりの無理がありますよね。つまり、上がる時も下がる時も、必ずしも論理的な理由で市場が動くと考えるのは間違いです。

こんなことを考えていると、今話題になっているガバナンス改善や株主還元を思い出しました。もちろん、大変良いことです。ただ、株価がボロボロに下がり始めたら、もうガバナンスとかどうでもいいという話になります。配当についても無限に上げられないですし、いずれ景気が悪化し始めたら、配当原資も少なくなるし、評価も下がりかねないでしょう。今話題の自社株買いも、株価が高いところで買うなんてそもそもベストなのでしょうか。もちろん、自社株買いについては、アメリカでも言えることで、投資家からプレッシャーがあるから経営陣が株価を上げたいんです。周りの企業みんなが同じことをやると、結局自分もやらないと株価上がらないみたいな話になっています。日本の場合、アメリカみたいにストックオプションで儲けようとする経営者はほとんどいませんが、横並び現象でみんながやっているから自分もやらなきゃ、ということが起きます。面白いですね。

堅調な相場はいつまで続くのか

僕は普段それほど短期的な話はしないのですが、今非常に面白いのはやっぱり相場の堅調さです。日中足を見ると、結構な資金が市場に流れているのがわかります。主力銘柄の株価が上がり、バリュエーション的にすでに十分だと思われる銘柄でも上がっています。

個人的には給与所得が、少しずつ上がり始めたかなっていう気がするし、経済も決して悪くない。業績も悪くないし、法人税も下がるので、全て良い話ですが、こういった話がどこまで織り込まれているかって、そろそろ考えなきゃいけないかなって思っています。

不思議なくらいに堅調な今回の相場を見ていると、どこで調整が来るのかなって思ったりします。これまでの経験としては、調整が来るとみんなが思っていても来ない時もあるので、正直、答えはわからないです。この凄まじい買いがどこで、どういったカタチで止まるのか、を見たいという意味で今月の相場には注目しています。

不動産銘柄について思ったこと

大手不動産銘柄とREITの株価があがっています。これは日銀がREIT株を買っているのが一番大きな理由ですが、日銀の買いに乗じて地方銀行など様々な投資家から買いが入っています。中堅不動産銘柄もこれにつられて上がっているものの、更に上がる余地があるのではないかなと思ってます。

ある不動産会社から、賃料が少しずつ上がっている、という話を聞きましたが、不動産会社の多くは中期経営計画に賃料上昇の影響をフルには織り込んでいないように思います。

別の話として、オフィスビルの空室率について一般的に言えることがあります。利益が好調な企業はグレードの高いオフィスに移転する傾向があります。景気回復に伴いAクラスのオフィスビルの空室率が改善すると、一時的にグレードBクラスの空室率が悪化することになります。Bクラスに入っていた好業績会社がAクラスへ。ただ、まだそこまで余裕のない中小企業はBとCのままで、引っ越しません。中小企業の場合、大体業績の改善にはラグがあるからです。

ただ、より最近の話としてBクラスのオフィスビルでも空室率がじわじわとではありますが、改善してきているのではないかというのが僕の見解です。

空室率が改善すれば、ある程度賃料が上がります。ある不動産会社に賃料が上がるのかを聞いたところ、まだ上がってはいないという回答をもらいました。ただ、しばらく経つと、あ、上がっちゃいました!と仰るでしょう。商人は損していつか倉が建つ。

レナウン急騰

何が起きたんでしょうね?この銘柄名を見ると先日の辛い記憶が蘇ってきます。

皆さんご存知の通り、先日驚きの動きを見せたのがレナウン(3606)です。3/30、3/31と株価が急騰しましたよね。

ブルームバーグなどの情報によれば、急にインバウンド銘柄として認められたようです。会社に問い合わせたところ、「何も材料が見当たらないし、業績もよくない」という答えが返ってきましたが、そんな状態で株価が急に倍になるというのは、ちょっと考えにくいです。何らかのカタチで情報漏えいがあったのではないかと疑ってしまいます。何があったのか後に判明するかもしれませんので少し楽しみにしています。

日本の草食系男子について

先日テレビを見ていて面白いなと思ったのが、日本の若い人たちが性に関心がないという話です。いわゆる、草食系男子、これが進化した断食系、絶食系といわれる男性についてですね。

私の世代にとっては、若い男性が性的な関係を持っていないということが信じられないことですし、私より若い世代でもきっと驚くでしょう。やはり、国や世代、場合によっては男女の違いで全く別次元のような価値観をもつ人々が世の中にいることはおもしろいな、と思います。と同時に、日本の成長についてまた気になり始めました。

個人的に、性欲と出世欲というのは少なからず関係していると思っているので、性欲が少ない人はお金にも興味がないんじゃないか、と感じるんです。なぜなら、もっと食べたい、生きたい、欲しいというような欲望はもともと身体から生まれるからです。

しかし、20歳代ですでに女性への関心がないのは、きっと女性と付き合うことや関係を持つこと自体が面倒くさいと感じているからなのではないでしょうか。面倒な関係を味わうこともなければ、味わいたくもないという意識が、お金についても同じように働いてしまうと、日本経済についても草食のままだと思います。

このまま断食系/絶食系男子が増えたら、経済活動の低迷につながることもあり得ますよね。これから日本はどうなるんだろうと、ふと心配になりました。

ROE6%以下の良銘柄を発掘!

最近市場を見て気になることが一つあります。日本企業が本格的に変わっているのか、カタチだけで変化を見せかけているか。そればっかりは分かりませんが、バランスシートの強い、キャッシュリッチな会社が自社株買いや株主配当を大幅に増額する時の市場の反応が新鮮です。市場が大きな拍手をしているような感じに見えます。もちろん先頭を走っているといえるのは、稼いだ利益を全て株主に分配するといったアマダさん。

市場がこんな状態であれば、僕からシンプルなスクリーニングを提案します。まず日本の上場企業から銀行を除いて、JPX400に入るような大企業に絞るため時価総額を500億円以上、さらにROEが低い銘柄に絞り、ROE6%以下。そして、有利子負債がなく、一応利益が出ている、さらにEV/EBITDAが6倍以下の銘柄でスクリーニングをし、以下の10社を選びました!

パナソニック(6752)、ニコン(7731)、ベネッセホールディングス(9783)、イビデン(4062)、セイノーホールディングス(9076)、東亞合成(4045)、富士機械製造(6134)、タカタ(7312)、ジョイフル本田(3191)、ドトール(3087)。この中で少し気になるのはタカタさんだけで、他の企業は、堅調な業績をあげています。それぞれの株価は結構上がっているように見えますが実はまだ割安なんです。今回のスクリーニングのポイントは、時価総額500億円以上、ROEが大体4.5~6%、EV/EBITDAが6倍を切るため、割安で買収しても楽しい、つまりあまり深く考えなくてもアンダーバリューな銘柄ですね。これらの銘柄がアマダさんのような動き出すのは時間の問題でしょうか?

エストニア国民IDカードの使用感

今回はエストニアの国民IDカードの話です。エストニアに帰国したとき、改めてシンプルでやりやすい制度だなぁ、と思いました。

電子式の国民IDカードの普及率はエストニアが世界一で、8割を超えています。このカードは生年月日などの基本的な個人情報を自己管理できるアイテムなのです。

実は、エストニアで販売されているパソコンにはカードリーダーがセットになっているんです。
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そのため、自分のIDカードとソフトさえあれば銀行取引などを自宅PC、またはスマホのようなモバイルを使うことで簡単にできます。選挙に参加することも、会社を立ち上げることもATMからお金を引き出すのと同じぐらい手軽にできるのです。

ここで疑問に思ったのが、どうしてこのシステムをそのまま日本で使うことができないのか、ということです。日本でマイナンバー制度を導入するためにはかなりの投資が必要になります。それなのに情報を一括で管理する仕組みを使わないのは、一気に何十万人という雇用がなくなってしまうからなのかな、と思います。エストニアのシステムを導入すれば、今は複雑なシステムもシンプルになり、税金や手続きにかかる時間も節約されるのだから、いいこと尽くしのはずです。やっぱり、自分の情報に手軽にアクセスできる世界のほうがいいな、と感じました。

ニュースから感じたロシア情勢③

ロシアのテレビを見ていたら、ロシアはやっぱり支配者の下でまとめられている国だなぁ、と改めて感じました。ヒトラーのときのドイツとはちょっと違うのですけど、ナショナリズムの温度が明らかに高くなってきているということで、少し異様な感じです。基本的に自国が辛いんだけど、自国の政府がダメだからどうにかしようと抵抗するのがそもそも難しいんです。よく言われているのは、中国の反日デモと同じ現象で、自国の政府に対して不満をぶつけるより、日本に対してそうする方がすごくやりやすいんですよ。政府も他国批判をサポートしているので、フラストレーションやストレスの発散になるところが似ているのではないかなと。だからロシアでもますます対外批判が強くなっているかなと思うんです。

ウクライナ側も無邪気な天使ではなく、そもそも自国内で飛行機を飛ばし一般市民まで爆弾を投下したりしています。このやり方がかなり酷いのでロシアからすると、ロシア語を話す人達を守りたい気持ちがあるというか、同じ民族が差別されているように見えるんでしょうね。だから解決の出口がないなぁという感じです。

ウクライナ情勢のリスクは残っているものの、意外と今は地域が限定されていて、恐らく現状以上にも以下にもならないでしょう。もし本格的に戦争をすればロシアは勝てますが、明らかに今の原油価格と全体の状態からすると戦争をするメリットがロシアにないんですよ。戦争をすれば、ロシアがイランのような扱いになるので望ましい方法ではなく、ウクライナを不安定な状態のままにさせておきながら破綻を待つのがベストな戦略だろうと考えているのかもしれません。そうであれば、1~2年は膠着状態が続くんじゃないかなというのが僕の印象です。