「はだしのゲン」は平和になった世の中からつまみ出されるのか?

「はだしのゲン」をある市の教育委員会が図書館に閉架措置を求めた、というニュースがありましたね。人の首をはねるとか描写が残酷な部分があって、それを問題にしているようなんですけど、一方で戦争や原爆の悲惨さを伝える作品を子供の目に触れさせないようにする、という決定に対して批判もたくさん出ていて、騒動になってます。

いま、「The Better Angels of Our Nature: Why Violence Has Declined」っていう、めちゃめちゃ面白いアメリカの本を読んでて、この本は暴力のトレンドが変化している、世の中から暴力がなくなっていってる、っていう内容なんです。この本によれば暴力、例えば殺人の発生率なんかは世界的に下がってて、世の中すごく安全になってるんですよね。そう、どんな国でもね。しかもこれ100年とか200年かけてずっと続いてる流れなんですよ。

中世のヨーロッパで、人が死刑にされるとか拷問されるのを見物する、というのはいまの日本のバラエティ番組に相当するような娯楽でした。みんなで集まって、これからライブ見に行く!みたいな感じだったんですね。こんなふうに暴力を捉えるということが長い間続いてたんですよね。

「はだしのゲン」の騒動については、戦争を忘れるとか忘れないとかじゃなくて、世の中が平和になってきているってことが背景にあるんだ、と思います。そんなに遠くない昔には結構一般的だった「暴力」がどんどん減っていってもはや一般的じゃなくなってしまったんです。これは世界のトレンドでもあります。

だから「はだしのゲン」の暴力描写が時間の経過とともに「例外的なもの」として映るようになってしまったんですね。そして子どもたちが「はだしのゲン」のリアルな描写をみて、間違った理解をしやしないか、ってことが心配されるようになってしまったんです。このあたり、「ビデオゲームに影響を受けて人を殺すのか」っていう議論と同じ話ですね。

でも僕は「はだしのゲン」が伝えてくれることは絶対忘れちゃダメだって思いますけどね。

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