日本の存在感について

お久しぶりです。
先日まで、しばらくエストニアに帰省していました。

毎日ニュースを見ていましたが、日本については、洪水のニュースが報道されたのみでした。ヨーロッパの政治経済ニュースには日本が出てこないんです。

ヨーロッパと日本は元々それほど関係が深くないのですが、ヨーロッパのニュースには中国は出てくるし、少ないもののインドのニュースも出てきます。でも、ヨーロッパでは日本は存在していないんです。これは結構不思議なことです。

ところで、少し前から、英国のSuperGroup plcというアパレル会社が「Superdry – 極度乾燥(しなさい)」という漢字混じりのストアブランドを出しています。また、エストニアで娘を水泳に連れて行くと、エストニアの子供たちは日本から来たことにすごく興味があるようだったし、水泳のコーチは突然iPadで日本の水泳の本を出したり、全然日本食レストランじゃない店にUmamiとかいう名前がつけられていたり、日本にすごく関心があるんです。もちろん寿司も流行っているし、日本に対する憧れや興味があるものの、日本は全くそれを利用していないんです。日本は自分たちのポテンシャルを使い切っていないし、所詮アジアの国っていうのが日本のコンプレックスかもしれません。イタリアみたいな中堅クラスの国も自国の文化を世界に売り込んでいますから、やっぱり日本も世界で活躍して欲しいですよね。

日本は非常にユニークで素晴らしい文化もありますから、日本に長く住む人間のひとりとして、もったいないなぁと感じます。移民受け入れや、歴史認識についても、誰が正しいとかではなく、もう少し上手く対応すれば、世界で輝く日本になれるのではないでしょうか。

内閣支持率低下とアベノミクスの先行き

安全保障関連法案の閣議決定後、海外投資家から「安倍総理の力が弱まり、アベノミクスをはじめとする経済政策や戦略が実現できないのではないか」という懸念が聞こえています。

コミュニケーション戦略、オフセット戦略も踏まえて、自分たちの政権で法案を通したかった理由があるとは思いますが、やっぱり世論とか選挙だけではないので、せっかく法案を通しても、経済に対しても責任をもって取り組まないといけないし、黒田さんが始めたことが中途半端で終わって欲しくありません。

市場に対しても、バリュエーションがいいところに来ている中、結局、アベノミクスで何をどこまで真面目にやれるのかが懸念材料の一つとなっています。ホントにコントロールがきいているのか、戦略はあるのか、安全保障関連法案を無理やり通したので、安倍さんの政治的求心力の低下につながったのではないかといった疑問が出始めます。支持率の低下と共に、自民党内も含めた様々なところで妥協し、公明党などとの関係も複雑になって身動きが取れない状態になり、アベノミクスという経済戦略を続けることができない、となれば大変なことですよね。支持率の低下がアベノミクスのスピード低下につながるのではないか、と、海外投資家と同様、私も内閣支持率の動向には注目しています。

TPPと親友米国によるスパイ活動

少し前の話ですが、ウィキリークスが「アメリカが日本政府や日本企業を盗聴していた」と暴露しましたよね。ウィキリークスが報じた盗聴内容は第1次安倍政権時代のものでしたが、おそらく盗聴は今も続いていることでしょう。

TPP交渉にあたって、アメリカやオーストラリア、カナダ、イギリス、ニュージーランドには、日本政府の戦略、手の内が丸見えだったわけです。つまり、日本は負けゲームをしているのではないでしょうか。この盗聴についても、日本はアメリカが大事なので、遺憾の表し方も、中国漁船が領海侵犯した時の大騒ぎと比べればカワイイもので、日銀幹部の自宅番号までわかっていて盗聴していたというのに、盗聴は困るよね、と発言する程度です。

これに対して日本のメディアも国民も、仕方ないねという態度なのもどうかと思います。ホントにこのままでいいのか?と皆さんに問いかけたいです。

例えば、M&Aの計画をある会社がしていて、相手企業がスパイ活動をして全部話を聞いていたとしたらM&Aは白紙になるに決まっていますよね。信頼関係の面から考えても、同盟国(友達)だったらなんで盗聴しているんでしょうね?日本はアメリカに対してスパイ活動は絶対やれてないし、できるわけないので、一方的にスパイされて、軽い遺憾のコメントを残すのみ。こんな甘さでホントに大事なこと、大胆なことを日本が出来るかというのが、最近一番気になっていることです。

原発再稼働をめぐる議論から感じたこと

日本では原発再稼働についての議論が繰り広げられていますが、再稼働してホントに大丈夫なんでしょうか。ヨーロッパならものすごい反対運動がおきるかも知れません。

ある会社の専務と先日会ったんですが、彼はちょうど福島の工場への出張から戻ってきたところだったので、原発関連の話をしました。原発から20kmくらい離れているところにあった工場は、全部アウト、操業できる状態じゃなかったんですが、たまたま別の地域で大きな工場を比較的安く手に入れたので何とか乗り越えたんです。2015年の今でも、元の工場一帯は2.5マイクロシーベルト/h超で、今でも放射線量の高さは半端じゃないようです。

そもそも県民に対する責任とか、人の命、夢、暮らしを含めて、何にも片付いていないように思えます。同じような事故を二度と発生させないような対策がされない状態のまま、再稼働しても基準上は大丈夫だから、という流れになっているのではないでしょうか。

世界で最も厳しい基準だと言われている新基準にも甘さがあります。例えば老朽化対策については、新基準とは別の審査となっており、運転期間が40年以内の原発には適用されていません。40年以内の原発は、新しい基準に則って審査しているから問題ないよ、という感じです。

それにしても、原発再稼働についてなんで大きな反対運動が無いのか不思議です。小さな抗議はあるものの、なんでデモがないんでしょうね。すると、再稼働しても構わないと受けとめられ、いつのまにか再稼働していたということになりそうです。そして再稼働したことについて、誰に責任があるのか結局よくわからないね、という話になります。

つまり最終的には、国民として、気になる、気にならない、程度の話に捉えられています。なんか少し騒いでいたけど、最終的には騒ぎも収まるという感じで、よくあるパターンなんです。原発については長期的に見ればマイナスで、電気料金が上がる下がるの問題とは比較にならないのにと思っています。

日本人とルール

日本人の法律に対する態度、取り締まりの仕方が面白いと思います。

自分自身、タバコを吸わないし、小さい子供がいることもあってか、歩きタバコ問題が非常に気になります。歩きタバコの禁止は各自治体/区の条例で決まっていて、禁止区域内には、禁止のサインが電柱などあちこちにあります。

ところで不思議なことに歩きタバコについては警察が全く関与していません。罰金が発生する場合、警察が取り締まるケースが普通かと思ってました。警察による取り締まりが、歩きタバコ撲滅に効果をもたらすことは間違いないと思います。つまり禁止区域でタバコ吸っている人は、おまわりさんに止められて、1,000~2,000円の罰金を支払う。すると恥ずかしいし、多分二度としなくなるのではないでしょうか。

だけど現状では警察による取り締まりがないためか、歩きタバコで注意された直後は気を付けたとしても、しばらくすると他の人も違反しているじゃないかと感じて、また吸い始めます。

僕はガイジンとして、日本語を勉強し始めたころから、日本人はルールと法律を守る国民だと思っていました。しかも、日本に来て大変な驚きだったのは、どんな狭い道だったとしても赤信号を渡らない人が多いということです、歩きタバコをするような人でも。世界中を探してもこれは珍しい。

警察が取り締まらないからというか、行政の取り締まりが弱いからかはわかりませんが、この歩きタバコと赤信号の行動対比に驚いています。自分の身が危ないから赤信号を渡ってはいけない、というのが海外ですが、日本では何となく渡ってはいけないという考えのようです。

歩きタバコは明らかに迷惑行為で、子供の顔の高さに火があるわけだし、煙も有害です。タバコを吸う人の考えは、信号は習ったことだからルールを守るけど、歩きタバコが禁止になったのは最近の話なので、周りがみんなやらなくなったらやめる、といったところでしょうか。

ちなみに歩きタバコは2020年までに東京の街から完全に消えると確信しています。
なぜかというとオリンピックに向けて撲滅キャンペーンを強化するとともに、みんなが歩きタバコをしなくなると考えるからです。でも、みんながやらなくなってから、ようやくやめるって、それも他の人の動きを見てから横並び的に自分の態度を決める日本人的な特徴かな、と思います。

どんなブルマーケットにも必ず終わりがある!

そろそろ今回のブルマーケットサイクルの終わりがいつ来るかというのを考える必要があると思っています。

今あるのはアメリカを中心とした量的緩和など、ある程度、中央銀行が作り上げた景気であるということを忘れてはいけません。もちろん原油価格が安いというのも、理由の一つです。これが世界の経済成長に本質的にどうつながっているかというと、まだ見えないところがあります。新しいバブルが目の前にできている、というのもありうる話なのです。

日本の経済戦略は世界から注目されています。アメリカとの関係の強化、憲法の改正、TPPといった話はつながっていて、なぜ日本がこれらを達成したいかというと、おそらく長期的に中国に対抗するため、日本とアメリカがお互いに離れられない関係にしようとしているからでしょう。

今の世界経済はクラブみたいな感じなので、クラブのみんなから自分の行動を認めてもらえるかどうかが非常に大事なポイントです。円安を中心としたサポートがアメリカからあれば、おそらく日本経済はアメリカ経済と同じような道を歩むことになり、上がるときもこけるときも一緒になります。

ですので、今はアベノミクスの評価よりも、アメリカ経済がいつ、なぜこけるかをそろそろ考えた方がいいでしょう。アメリカ経済がこけるとき、ブルマーケットにも終わりが訪れるでしょうから。

サマーラリーは訪れるのか?

株式相場には「Sell in May」(5月に売れ)(Sell in May and go away)という英語表現があります。つまり5月から秋までのパフォーマンスは歴史的に良くないという説があるんです。幸いにも今回の日本株式市場ではそうはなりませんでしたが。

面白いことに株式市場の各ステージには、ロジックというか流れがあります。今回、サマーラリー(Summer Rally)の有無に関わらず、まだアップサイドはあるだろうというのが市場のコンセンサスだし、僕もそう思っています。まだ上がり切っていないというのが結論かなと。

最近では大型株も多くの良質な小型株も、明らかにフェアバリューゾーンの高めの領域に入っています。業績もいいし、バリュエーションが高くてもまだクレイジーに高い領域には入っていないため、自分が前から保有している銘柄については持ち続けやすいです。一方、成長型銘柄を新たに保有することについて、自分としてはすごく抵抗があります。

自分が安心して保有している銘柄についても同じことが言えます。つまり、今の価格でその銘柄を買いますかと言われたら、おそらく買わないという銘柄が大半でしょう。そうであれば、株式市場そのものに対する強気の姿勢で保有し続けるか、それともそもそも長期保有のつもりでありながらも、クレイジーに高い領域に入ったら売る、というどちらかのスタンスをとることになります。

最後に、僕が予想したというより、そうならないとおかしいというようなレベルの話ですが、バリュエーション的に安く、経済が本当に強くなれば銀行の利益が伸びるだろうということで銀行株、金融株が面白いと以前から言っていました。これがまさに最近動き始めました。今までもそうだったので業績が伸びたら、簿価以上のバリュエーションがつくだろうと思います。こんな単純なロジックで金融株が一番わかりやすいかなと思っていますが、素晴らしくスムーズに上がる夏になるのか、はたまた不安定な夏になるのかはまだ見えませんね。

大塚家具の騒動から親族経営のリスクを考える

今回は親族企業におけるガバナンスについてお話します。

ガバナンスとは何か、ということが大塚家具の騒動で浮き彫りになりました。今回の大塚家具の件には、世代交代中のガバナンスについて考える材料がありますし、類似事例は他にもたくさんあることでしょう。この事例は単純な話ではないし、簡単な答えがあるわけではありません。

もし大塚家具が委員会設置会社であったなら、良いか悪いかは別として、ガバナンスをきかせる仕組みが働いたのではないかと思うのです。これは委員会設置会社に設置される指名委員会には、取締役の選任や解任に関する議案の内容を決定する権限があるからです。この指名委員会がなかったために、簡単に言えば、親子の意見の相違に基づく争いに株主がいきなり直接巻き込まれる、関与せざるを得ない、という事態になりました。

シチュエーションによって例は様々ですが、間違いなく言えるのは、今回の騒動のような事態は株主たちによくない影響を与えるリスクが極めて高いということです。
騒動のリスクが高いと、どちらかと言えば持ちたくないな、と思う要素が発生してしまいます。

日本企業は世代交代の際には株主の立場についても考えなければならないし、親族経営の会社が現状でも十分ガバナンスをきかせた組織になっているかどうかの見直しも必要です。株主も、こうしたリスクを考慮して企業と対話していかなくてはならないのかな、と思います。

ベストプラクティス(模範解答)を考えましょう
~ガバナンスコード/スチュワードシップコード~

今回はガバナンスコードとスチュワードシップコードについての話です。

ちょっと調べてみるとイギリスにもアメリカにも、ベストプラクティスのようなものがあります。つまりスチュワードシップコードなどに対して、投資家にとって何がベストかを示したものがあるのです。ガバナンスコードは、少なくともこれをしなさい、こういうスタンスをとりましょう、というガイドラインなので、具体的に何がいい、何が好ましくて、何が悪いかというのを判断するために、日本にもベストプラクティスがあれば変革のスピードが加速すると思います。

例えばROEについては、伊藤レポートでROE8%の目標を掲げています。金融の専門家ならよくわかることですが、ROE8%というのはあまり意味のある話とは思えません。色々理由付けしていますが議論の余地があります。ガバナンスコードや伊藤レポートのポイントは、どこかで線引きをしないとなかなか具体的に話が進まないのでROE8%を最低ラインとして達成しよう、という点にあります。

最終的には経営者の意欲や株主からのプレッシャーによって、持続成長もROE8%以上も達成可能だと思うので、投資家サイドが様々な例をみてベストプラクティスをつくる必要があるかなと思います。

ガバナンス構成についても、株主価値の観点からすると、どういう仕組みがベストなのか、どういうガバナンスが本当に効果的なのか、がわかるかどうかというのが重要なポイントです。今単純に決まっている日本のガバナンス構成としては、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、委員会設置会社があります。これまでの日本の習慣や会社法等の成り立ちが影響し、これらの仕組みがありますが、最終的には投資家や株主にとってベストな仕組を選択する必要があるでしょう。今回ガバナンスコードが導入されましたが、ガバナンスの改革や変革はまだ第一歩を踏み出したに過ぎませんので、次に必要なステップはベストプラクティスだと思います。これについて自分でももっと考えたいし、皆さんもぜひ考えてみてください。

ピークを越えた後は?

株式市場にもサイクル(循環)があるので、今の相場の勢いを見ると今回のサイクルの頂点がもう見えたような気がします。つまりピークを越えたらどうなるかっていうのを考えなきゃいけない時間が近づいて来ています。

もちろん、短期的にはまず「Sell in May」(5月に売れ)という現象が起きるかどうか気になります。今の元気な相場だとこのまま夏のラリーが訪れて、5月に売った人が馬鹿みたいことにもなり得ます…

関係ない話ですが、先日A社の個人株主から聞いて驚いた話がありました。この方は2001年からA社株をIPOから持っていて、「めちゃくちゃ儲けさせてくれた。すごく良い株だ」とか話していました。ただ、よく聞いてみると、時価総額の概念がわかっていないようでした。株数だけで見ていて、株式分割されると元々2万株例えば持っていたとして、今4万株持っているのが嬉しいと。それで半分売っても、元々持っていた2万株がそのまま残っている、これが嬉しいみたいな感じです。A社の株価を確認したところ、確かに上がっているようですが、IPOから買っていたら14年間かけて倍になっています。興奮するほどのリターンじゃないでしょう。株数が増えることにあんなに喜ぶる人がいるんだなあと思いました。

だから分割で株価が上がるか…と思うと、市場参加者はみんな合理的な行動しているでもないし、場合によって半合理的な行動もとっていません。このため短期的な動きを占うにはかなりの無理がありますよね。つまり、上がる時も下がる時も、必ずしも論理的な理由で市場が動くと考えるのは間違いです。

こんなことを考えていると、今話題になっているガバナンス改善や株主還元を思い出しました。もちろん、大変良いことです。ただ、株価がボロボロに下がり始めたら、もうガバナンスとかどうでもいいという話になります。配当についても無限に上げられないですし、いずれ景気が悪化し始めたら、配当原資も少なくなるし、評価も下がりかねないでしょう。今話題の自社株買いも、株価が高いところで買うなんてそもそもベストなのでしょうか。もちろん、自社株買いについては、アメリカでも言えることで、投資家からプレッシャーがあるから経営陣が株価を上げたいんです。周りの企業みんなが同じことをやると、結局自分もやらないと株価上がらないみたいな話になっています。日本の場合、アメリカみたいにストックオプションで儲けようとする経営者はほとんどいませんが、横並び現象でみんながやっているから自分もやらなきゃ、ということが起きます。面白いですね。